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思い出す初めての体験1

ある山の名前を聞くと思い出すことがある。それは私が20代のころの事。

この日、夕方車で本屋に出かけた。バッグから財布だけを取り出し本屋の中へ。この頃から本屋さんで長居をするのが好きだった。1時間以上過ごしたと思うが車に戻るとバッグがなかった。車上狙いにあったのだ。

その時に乗っていた車は父の車だった。私の車は買ったばかりで、二つあったキーはすべてバッグの中にあった。免許証も入っていた。バッグは1週間前に買ったもので当時名の知れたブランドバッグである。幸い財布だけが手元にあり無事だった。すぐに警察へ行ったが「出てこないと思った方がいい」と言われたが、しばらく運転ができないほど落ち込んでいた。

夜になると、免許証と車のキーが入っていたので住所を調べ夜中に車が盗まれるのではないかと気が気ではなく眠れなかった。古くなったバッグを手放した矢先だったし、もし古いバッグだったら未練はなかったのに、と頭の中に様々なことが浮かんでくる。気付けば朝だった。

翌日、私は車があってもキーがなくて乗れない。父の車もない。そこでお世話になっている自動車屋に電話し、車を借りれないか頼んだ。運がよくその会社は慰安旅行へ行くため、2日間は無料で車を貸してくれると言う。すぐにかりに出かけた。

しかし、この出来事にショックを受け言葉も少ない私に母が

「公園のおばあさんの所へ行け」

と言う。何やら、不思議な力を持っているおばあさんらしく行方不明者や家でをした人の足を止めて遠くへ行かないようにしてくれるという。盗まれたバッグも遠くへ行かないように頼んで来い、というのだ。私は半信半疑でその公園のおばあさんの所へ出かけた。ここで公園のおばあさんと言っているが実際は公園ではなく地名がそこに入るがここでは公園と表現することにした。

 

場所はすぐに判った。外には赤い旗が沢山並んでいて普通の一軒家が神社のような様子をしている。建物は濡れ縁があり古いがごく普通の一軒家である。玄関ベルを鳴らすと中で待っていろと言われた記憶があるが、どれほど待ったのか他に誰かいたのかなど細かいことは記憶にない。

呼ばれて中に入ると、そこは8畳ほどの和室で神様っぽいなにかを沢山飾り、座布団の前に神社にあるような賽銭箱が置いてあった。おばあさんと聞いていたが確かにお婆ちゃんといっても失礼に当たらないと言える年齢だ。

中央に座り、事情を話した。すると、くるっと後ろを向き、神様っぽい飾りのある方を向いた。そこにはよく見ると石が置いてある。25センチから30センチぐらいの大きさだと記憶している。おばあさんは手を合わせ独り言をつぶやき始めた。時々私の方を振り返り質問をする。

「大きいカバンか?  色は?」

程度ではあったが正確に情報をつかもうとしていると感じた。するとおかしなことに気付いた。おばあちゃんは石を目の前に一人で会話をしているのだ。それも石を持ち上げたり降ろしたりしている。

「ああ、そうですか。 そりゃ、そりゃ」

でも私には石からの回答は聞こえない。私は耳を澄ましここかから聞こえてくるはずの声を聞き取ろうと試みた。もう一つ私を焦らせるのがお賽銭箱だ。実は出かけるときに封筒の中にお金を入れて渡すシステムだ、と聞いていたのでその通りに封筒に数千円のお金を入れ名前を書いておいた。ただそれをお賽銭箱に入れるのかそれともお賽銭は別なのか、どうしたものだろうか? 今思えばおばあさんに聞けば簡単な話であるが若かりし頃の私はそ純粋さと大人しさが邪魔をしていた(笑)。

 

石を持ち上げたり降ろしたりしながら会話をすることしばし。不思議な時間に終わりがきた。くるっと振り返り私を見たのだがこの時かなり緊張した。

「出てくると言っておらっしぇる」

「・・・・・・・・・え?」

「お母さんは何しとらっしぇる?(なにをしている?)」

「家にいます」

「おかあしゃんと一緒にいきなしゃぁ。本屋の南北の道の草むらの中にあると言っておらっしぇる。」

「・・・・ありますか?」

「ある、と言っておらっしぇる」

「・・・・・はぁ。。。。」

所で誰と会話した? 私には聞こえないがそれが正しいのでしょうか? それとも聞こえない私がいけないのでしょうか? でも確かに、おばあちゃん、会話してたよね? 呆然とする私に

「行ってきなしゃ~」

の一言で自宅へ戻ることになった。家に到着し冷静になってみたがどちらかと言うと信じていなかった。大体、信じられるはずがない。そのまま放置していたら母が結果を聞くのですべてを話すと、軍手と長い棒を持ち出かけると言い出した。まさか、本当にバッグがあると思っているのか? が、ダメもとで出かけた。

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