恭平の物語(Story of Kyohei)


目次


こんなことになるなんて!

価値とは何だ!!!

 恭平の活発さはなおも続き、ある時、私はおしゃれで、裾のひらひらした薄手のワンピースを持っていた。歩くたびにすそがひらひらとして、お気に入りの1枚で、結構高かった物だ。そのワンピースを着てお出かけしようとしていたときである。思いっきり何かに引っ張られ、ついでにびりっという音をさせ、つんのめった私は、何??と振り返った。ははは。。。恭平がワンピースのすそをかんでぶら下がってる。。。え???まさか???破れた???ははは。。。恭平はすそを咥えたまま尻尾を振っている。なに???何考えてるの???どうしてそういうことをするの???何の意味があるの???全く発狂しそうだ。。。。。

 当時、恭平は私の部屋でやりたい放題で、もちろんその都度、叱ってはいたのだが、人間の想像を超える事をしでかし、私は手を焼いていた。まさかそんなことをしないだろうと思う事が、全部裏目に出るのである。私がブランド志向でなくなったのも、恭平のおかげ?である。

 いつも元気で明るい性格の恭平を信じ、「恭平は家族がめんどうみるから私が1週間ぐらいいなくても大丈夫よね」と勝手な事を言い残し、1週間の旅に出た。旅行から帰った時のこと、当時10万では買えない、ボストンバッグ、当然ブランド物だったのだが、見事にかじられていた。使えないほどにかじってあった。もう少し遠慮してくれたら何とか使えたのだが、恭平にとっては、100万円も10円も見分けがつかない。 その屑と化したバッグを見たとき、初めて、怒りのあまり声が出ないということを経験した。これからはかじられても後悔の無いようなバッグを使おう!!それに洋服も、穴があいても失神しないようなものを着ることにしよう。こうして、私のブランド生活は終わりをつげたのだ。

 その後も日ごと賢くなる恭平は、私が叱るのを知っているのか私が部屋を空けると部屋の中で手の届くものは全て噛んでゴミにしてくれた。低い家具でインテリアしていたので、何でも手が届くというのもいけなかった。その後、たんすごと変えたのは言うまでもない。壁一面を新しいたんすで埋め尽くし、床にはおろか、恭平の身長までの高さには何も置かないと決心した。インテリア???何の話???実用性が大切よね!

ダックスの恭平
旅と悲劇

 動物をなめてかかるとこれもまたひどい目にあう。また違う旅行をしたときのことだ。恭平を、いつもどこへでも連れて歩いていたのだが海外へまでは連れて行けない。ほんの l週間で帰ってくるからいい子で待っててね。と言い聞かせ、当然理解してくれたものとして、海外へと旅立った。まあ、バッグの件は忘れよう。その代わり、いい子で留守番をしてくれるはずだから、ちゃんとお土産も買って帰るからね。なんて事を言いながら...

 旅先では当然私は恭平が恋しくてたまらない。ブランド物のショップへ行くより恭平のお土産をあれもこれもと買い込み、夜は一緒に同行した友人に犬の話をくどいほど聞かせた。「恭平はね、私がいないとほんとだめなの。何時でも何処でも私と一緒でないと。きっと今ごろは私がいなくてしょんぼりしていると思うの」なんて。空港に飛行機が着陸するときには、「私の帰りを待ちわびてるわ、ごめんね」なんてちょっと感傷に浸っていた。

 無事家に帰り着くと、真っ先に恭平を抱きしめた。思ったより元気だ。すぐさまスーツケースから、恭平へのお土産を全部出して、恭平に見せた。一息つくと。弟が、「俺はしらんよ」というのだ。なにが?何があったの?

 私は出かけるときに、家族に、恭平を私の部屋に入れないでね。ひょっとして何か悪いことをするといけないから。と、頼んで行った。私はいつも旅行へ行くときにベッドもきれいに片づけていく。あってはいけないことだが、もしものことがあると、よく、遺族が、部屋をそのままの形にしておく、ということを聞いてから、あまり散らかっていると、未練もなくさっさと片づけられるし。遺書こそ書かないが、見栄えよくして出かけるのだ。ところが、そんな私の気遣いは恭平にとっては遊び場所が広くなた程度のことでしかない。

 そして弟の言葉を聞いて私は私の部屋へ行ってみた。これが人間の部屋かと思うほどに汚れていた。大袈裟ではない。恭平は私のもらい物のぬいぐるみで遊んでいたのだが、このぬいぐるみの中身が悪かった。発泡スチロールを細かくしたものと、ナイロン繊維の細かいパンヤみたいのを一緒に混ぜたものが入っていた。見事に恭平はこの中身を部屋中、本当に部屋中、どうやってここまできれいに部屋中広げたのだろう、そう反対に感心してしまうほど角からすみまできれいに広げてあった。もちろんそれだけではない。ベッドの上にも、何があったの?と聞きたくなるようなありさまだ。

 この時2回目の怒りで声が出ず立ちすくむ、という経験をした。これは間違いない。仕返しだ。恭平の仕返しに違いない。いい子だからという、人間の側の勝手な思い込みで反対に動物を見くびった。大袈裟だけどそう思った。恭平にしてみれば面白くないはずだ。いつでもどこへでも連れていってもらえるはずなのに、こんなに長い間、ほったらかしにして頭に来たのだろう。それとも、もう私は帰ってこない、それならば「僕がこの部屋の主だから、すきにさせてもらおう。僕の天下がやってきた。」まあ、そんなところではないかと思う。ということは私は自分の都合のいいようにしか恭平を可愛がっていなかったのかもしれない。恭平に勝手な期待するのは飼い主のわがままだということにしておこう。

 しかし、この子があと10年生きるとしたら・・・・私は?その年までこのやんちゃを面倒見ていくのか????そんなのいやだ。。。冗談だろ???あっちいけよ!!!くっつくなよ!!!なつくなよ!!!はっきり言うと、後悔をしていた。仏壇に手を合わせたことも後悔した。できるならほかの家族になついてほしい。しかしほかの家族は恭平がいるとゆっくりできないという理由で、恭平を寄せ付けない。何てことだ。恭平を見るとなにやら、にそっと微笑んでいるように見えるのは気のせいだろうか????

感電?

 とはいうものの、元気で明るい恭平は、又我が家のアイドルとなっていった。行動の全てが、愛らしく、大人ばかりの暗くて会話の無い家庭が、恭平によって会話のある家庭へと変わって言ったのは間違いない。本当にペットと言う存在は不思議なものである。たった、 1匹の犬が、これほど家族影響を与えると言うのは、想像もしていなかった。それに、愛情を与えると言うことが、どんなことなのか、改めて、考えさせられるようになったのだが、これはきっとペットが、想像以上に愛情に応えることの出来る動物だということだろう。

 しかし、恭平は相変わらず、元気だ  ある日ある倍と先から、母へ電話をしたところ、母の様子がおかしい。奥歯に物が挟まったようないい方で、いつ帰るのかと聞くのである。夕方には帰る。と言ったが、なんとなくいやな感じがしていた。心配しながら家へ帰るとやはり、私の勘は的中した。恭平が、電気のコードをかじって、感電したのだ。かなりのショックを受けたらしく、この世の終わりかと言うような泣き声と共にうんちもしてしまったらしい。顔を見るなり、もー、抱きしめて泣いた。直ぐに動物病院へ連れて行ったが大したことは無いという診断で一安心。が、それから、ちょっとした油断が、ペットの命を落とすことになりかねないと思った。やはりなんと言っても、ペットを守るのは飼い主であり、この子の人生が、楽しいものいなるのか、それとも辛いものになるのか、私がその権限を持っていると言ったら大げさかもしれないがそれでも、「この子を、犬の中で、一番幸せな子にしてあげよう」と、抱きしめながら誓った。

が、そんな私の優しい思いはなんのその!!抱きしめる私の手を振り払い、走り去る。何だ?何事だ? 走り去る姿を唖然と見ていたら、今度はボールを加えて私の元へ走ってくる。

少しは落ち着け!君は感電したんだ!!!!!!!

車酔い対策とサル

 恭平は車に酔う。大体10分も走ると、気分が悪くなるらしい。しかし、人間なら車恐怖症になるのだが恭平はそのあたりを気にしない。私と一緒に行けるところなら何処へでも行くのが当たり前で、「車に酔うから僕止めとく」とは決してならない。外の景色が見えないと車に酔うのかもしれないと、窓の外が見えるようにクッションを作って置いたり、車の窓を開けてみたり、本当に色々と工夫した。そして、徐々に酔うまでの時間が延びていく。10分に1度は車を止めていたが、それが20分まで大丈夫になった。

 車の中で酔わずに快適な姿勢は、恭平自身が色々試していたようだ。結局、その姿勢は、まず私と車のドアの間の隙間に入り込み、私と同じ方向、つまり前を向き二本足で立ち上がる。それでは不安定なので、背もたれにもたれかかる。次にお尻は車のシートに乗せる。そして、窓を開けて欲しいと要求し、私が窓を開けると鼻だけ窓の枠に乗せ、不安定な体を支えるため片手はドアの段差のあるところに乗せる。

 サルだ。さる。サルが二本足で立ち上がり、お尻を床につけるあの格好と同じだ。違いは手が短いというところだろうか?家で食事を取るときも食卓の椅子に乗り、背もたれを支えに同じ格好をする。テーブルに手を載せると叱られるので、背もたれにつかまる。食事をおすそ分けしてもらいたいために、こういう格好をするのだが、意地悪な私は「お手」を恭平に要求した。やれるなら上げるわよ。が、不安定な姿勢から起用に「お手」をする。自分の欲しいものがあると、ここまで頑張れるのか? 私が負けて、少しだけご飯を上げた。すると、恭平は「思ったとおりだ」とでも言いたそうに、要求もされていないのに「お手」をする。はっ???まだ欲しいの? というより、こうすればおすそ分けをもらうことなんて簡単さ! というのが恭平の本音ではないだろうか?

  この姿勢のまま食べる恭平を見て、父は恭平の改名をした。「エテ吉」だそうだ。サルのエテ吉というのがいたらしく、そこから頂戴した。父にしては素晴らしい感性だ。

ダックスの恭平
パートナー・ドッグへの道

 私はリードが無くてもきっちり私の横について歩き、落ち着きがあり、従順な犬。そう、盲導犬のようなパートナー・ドッグというのが希望だった。この辺りはまだ田舎で、田んぼや畑が沢山ある。そのため、恭平をリードナシで散歩させる事も可能であった。それに少し車で走ると、ドッグ・ランのような公園も数箇所ある。その希望を叶えるには「待て」を覚えなくてはならない。ドッグ・ランで走り回っても、「待て!」と号令をかけると、ビシッと待つ必要もある。もちろん「おいで」も必要だ。そのため、「待て」と「おいで」をとにかくしつける事にした。が、あの落ち着きの無い恭平が待つはずが無い。これは根気比べだ。あきらめないぞ!!!!

 そして、家の中で訓練を続けたある日、「待て」も「おいで」もクリアした。今度は外での訓練だ。恭平を川原に連れて行き、リードを放し「待て」と号令をかける。が、プイッとお尻を向け走り去った。「こら~!!!!!待て~!!!」が、恭平の勝ちである。追いかける私を尻目に、あさっての方向へ走り去る。も~許さない!!家に入れないぞ!判っているわね!!!

家に連れて帰ると「いい?今日からあなたは外で寝るのよ。言うことを全く聞かない奴はご飯も無いのよ」と玄関のドアの前で説教をし、家の外でしばらく反省をさせようとした。 しかし、恭平は目をしょぼしょぼさせ、肩の力を落とし、いかにも反省をしている。それでも、自分に厳しくなければならない。「ダメ!そんな顔をしてもだめなの」と言う私に事もあろうか、お手をする。 あ~あ。怒りすぎたかな。こんなに反省をしているのに、クドクドと怒ってしまって私がいけないのかな。反省をしているし、今日だけは許してあげようかな。私の訓練の仕方もよくないのだろうな。ごめんね、恭平。もう少し上手に訓練をするから、許してね。と、自分の飼い主としての力不足を反省し、家に一緒に入り、ご飯をあげて、おやつまで上げてしまった。 そして、「こっちへおいで。仲良くやろうね」と言うと、私を無視して走り去った。まったく自分の甘さを思い知らされた。恭平に謝った自分に頭に来た。そして恭平の演技力にはもう騙されない。

留守番とチョコ

ある事がきっかけで、私が留守の間、恭平は私の部屋で帰りを待ているのだと気が付いた。そのきっかけはチョコレート事件と私が呼んでいる。

家に帰り玄関を開けるといつもそこには恭平のお出迎えがある。この日も同じようにお出迎えを受け、恭平と共に部屋に行った戻った。すると、銀色の細かい何かが部屋に散らばっている。何だろう? あ・・・・これは、と恭平を見ると、恭平は尻尾を振ることを止め私の様子を伺っている。「何?これは?」と言うと、きちんと座りなおし「ぼ・・・僕が確かにやってしまったけど、怒る?」とでも言いたそうな表情をしている。間違いない。出かける前に私はチョコレートを食べていた。そして、棚の上に置いたつもりでいたけれど、どうやらドレッサーの椅子の上に置き忘れたらしい。

 それを私がいない間に部屋に入り、食べてしまった。犬はチョコレートは中毒を起こすために食べてはいけない。チョコレートを食べられてしまったという怒りより、心配が先だった。

 でも、やってはいけないことだとその時に恭平をきつくしかった。いつもは私と一緒に2階にいて出かけるときはいつも玄関まで一緒に来て見送りをする。それが、私がいない間は私の部屋に勝手に入り、勝手なことをしているのかもしれない。そして、実験をしてみた。

 翌日、出かけるときにクッキーをドレッサーの椅子の上にわざと置いて出かけた。帰ったらどんな反応をするのだろう?

そして、帰宅して恭平と一緒に2階へ。恭平がクゥ~ンと言っている。気づかぬフリをしていると、又、クゥ~ンと言う。それもドレッサーの椅子の前に座っている。なるほど。やはり、恭平は私が出かけた後、私の部屋に戻り私が帰るまで時間をここで過ごしているようだ。

 よ~く観察してみると、ベッドの布団が沈んだあとがある。なるほどなるほど。ここで寝ているのだ。家には母がいつもいるけれど、母と一緒にいるより、ここで私の帰りを待っているほうがいいのだろう。なんて可愛いのだろう!!!!

 それに、昨日しかられたことをしっかり覚えていて、手に届くところにあるクッキーをわたしが帰るまで食べずに我慢していた。もう、なんて可愛いのか? 恭平に「クッキーは今日だけだよ。いい子で待っていたから今日だけ上げるね」と上げてしまった。甘い。私はかなり甘い。おまけに、私の部屋に恭平が待つ間に使うためのベッドを買ってあげたのだから、どうしようもなく甘い。が、恭平の可愛さには勝てない.。

 そして、私のひざの上で眠る恭平を見て、ふと、思った。この子は、こんなに私に怒られるのに、それでもこうして私のことを頼りにしている。この子はきっと一生懸命生きているんだ。わざと怒らせるために悪戯をしているわけでもないんだ。私から怒られても、指示されたことを一生懸命理解しようとし、勝手な感情で怒りまくる私を信頼し、寄り添ってくる。

 考えたら、新聞紙か紙幣か見分けがつくはずもない動物に人間の判断力を求めた私は身勝手な飼い主だ。思い起こせば、おトイレもちゃんと覚えた。今日の新聞紙の上で平気でおしっこをしていた恭平が、ちゃんと古い新聞紙の上でおしっこをすると理解している。そして、床の上に置いてある物はなんでも噛んでいるようで、実は、私のバッグだけは噛むことをしない。今日から、恭平の接し方が変わりそうである。

ほめるが勝ち

 私の親友も、パピヨンを大切にしていたがしつけには厳しかった。飼い主の言う事を無視する態度は許さなかった。それを見ていたこともあり、しつけるという事は、厳しくすることだと思っていた。

しかし、厳しくしても遊びたいだけの恭平は私の言う事を聞くより他に目に留まったものの方へ走ってしまったし、お手を教えている最中には「こんな事やってられるかよ?何の意味があるのさ?」という感じでしつけとは程遠いものだった。

 ある日獣医さんが教えてくれた。ワンちゃんは誉められる事が大好きと。知らなかった。いつも怒ってばかりで誉めた事があるだろうか? 無い。試してみる事にした。すると効果は抜群。いろいろな事をみるみる楽しそうに覚えて言った。

 さらに犬は飼い主さんの感情を読み取る力はありますから飼い主さんが楽しそうにしつけをすると、恭平君も楽しんでやります。と追加で教えてくれた。ん?感情を読み取る?実験をしてみた。恭平が昼寝をしている時に、理由は無いが私が喜んでいるフリをしてみた。すると、起き上がった恭平は「何???何?嬉しいの?じゃ僕も嬉しいよ」と言っているかのように、シッポをフリフリ私と一緒に喜んでいる。「ね、恭平、何がそんなに楽しいの?」と我に返ったふりをして言ってみる。恭平は動きを止め「え?」と私を見る。

そうか、恭平は私が嬉しいと嬉しい、悲しいと悲しいのだ。理由は何でもいいが、私の感情を分け合っているような気がした。

 私は恭平にお洋服を着せるとかおリボンをつけると言った趣味は無かったが、友人が恭平にクリスマス・プレゼントにサンタさんの洋服を作ってくれた。洋服を犬が喜んで着るはずが無い。しかし、着せた後に友人数人で「きゃー、可愛い。恭平君すごく似合ってるよ。可愛い!!!!」と褒めちぎった。恭平は、すまして座りサンタさんの服を着ていることが楽しそうだ。そして洋服を嫌がることはこの先に一度も無くなった。むしろ「どう?似合ってる?」とでも言いたそうだ。

そんな感じで、私は恭平を誉めるという技を見につけ、恭平も誉められる事に快感を覚え、恭平との生活はどんどん快適になっていった。これから犬を飼う予定の方も、私の経験をぜひ役立てて欲しい。犬も誉めればサンタさんになる。

ダックスの恭平
飼い主失格

 これは私の性格がとろいということを白状するようで、話すのを止めようと思ったのだが、動物行動心理学のよい材料になるので話すことにしよう。

 ある冬の日の夕方のことである。もう日が暮れて真っ暗になっていた。このとき家から車で5分ほどの距離のところで自宅に向かっていた。もちろん車の助手席には恭平がいた。

 運転中に車のバックシートでなにやらカタカタと異様な音がすることに気が付いた。何か判らないので赤信号で車を止めたときに確認することにした。サイドブレーキをかけ、車から降り、後部座席のドアを開け、音の原因を確認し車に乗った。音の原因はここでは省く。そのまま信号が青になり、車を発進させ無事家に着いた。

 しかし、助手席の恭平が見当たらない。どうして???後部座席にも居ない。後部座席にあった荷物を取るときに私が気づかぬうちに家に戻ったのかもしれない、そう思い家の中に入り両親に「恭平は???」と、すっとぼけた質問をした。「知らんぞ」と答えが返ってきた。当たり前である。いくら恭平が私より先に玄関に行ったとしても、玄関のドアは閉まっていた。入れるはずは無い。しかし、恭平が居ないということが理解できない私は、どこかに居るはずだと、探し回った。両親もその姿を見て、「居ないはずがない。どこかに置いてきたんじゃないのか???」と言うのだが、そんなことがあるはずが無い。何処に置いてくるのよ???家の周りに居るはずだと思うけど、でも、あれ?そういえば、車を止めてサイドブレーキをかけたわ。。。。

 ちなみに恭平は車のサイド・ブレーキの音で目的地に着いたのかただ止まっただけなのかを判断し、私が何も言わないときは一緒に車から降りる。そして、「留守番」と声をかけたとは車から降りない。もちろん、あの信号で止まったときにはサイドブレーキをかけ、何も恭平に声をかけていない。まさかの事態だ。恭平を置いてきた。。。。恐怖と不安が私の頭をよぎった。車に引かれていたらどうしよう??誰かが連れ去っていたら???とにかく祈る気持ちで、車を走らせた。 走ってきた道を逆にたどり、注意深く道路に倒れていないかを確認しながら車を走らせた。

 すると、いた!!!!私が通った道の途中で見つけた。きちんと歩道を歩いている。それもしょんぼりした姿で、道路のにおいをかぎながら、ほんとにとぼとぼという表現が一番適している。私は車を止め、走って恭平の下へ行った。「きょおへええええ!!!!」恭平は振り向いたが、そのまま歩いていってしまう。「恭平!!!私よ!!!大丈夫???」あまりに反応が薄いので頭を何処かにぶつけたのかもしれない。いや、車に当たったとか、歩いている人に石を投げられて怪我をしたのだろうか?何とか抱きかかえて車に乗せるが、尻尾も振らなければ、私の目も見ない。とにかく明るい家で体をチェックしよう。

家についたとたん、突然猛ダッシュで走り出して父の所へ。そしてシッポもフリフリ。あれ? 父は「置いていかれたか?頭にきたよな?」と恭平に言っている。

父が正しかった。恭平は私のことを怒っていた。

 同じような事は、恭平を美容院に連れて行ったときにも起こる。美容院に迎えに行っても尻尾も振らなければ、私の目も見ない。思い当たる事が つあるのだが、一つはおリボンをつけた恭平を「似合わないよね」とからかった事。もう一つは恭平はシャンプーが世界一嫌いな事。これらの理由から私に「僕は怒っている」と体中で表現する。可愛いといえば可愛いが、憎たらしい程の表現力には驚くものがある。